■英文法とは?
●世間でよくある誤解
●そもそも「英文法」って何?
■なぜ英文法が必要なの?
●英文法を知っておいた方が効率が良い
●英文法ができるとカッコいい
■日本人にとっての日本語文法
●実はずっと「日本語」を勉強してきた
●無意識に日本語の文法を使いこなしている
●「が」と「は」をどう使い分ける?
●ネイティブは英文法を使いこなしている
英文法とは?
●世間でよくある誤解
【世間の声】
「英語ネイティブは英文法を考えながら話していない。だから文法なんてやっても意味がない」
「我々日本人は日本語の文法を勉強していないのに話せるようになったのだから、文法の勉強は必要ない」
英語指導者の中にもこういった発言は見られます。
残念ながら、これは極めて浅はかな考えであり、とんでもない誤解、もはや大嘘です。
ただ、そんな誤解が起きるのもよくわかります。
従来の英文法は「無味乾燥なルールの丸暗記の強要」が大半なので、「苦痛・面白くない・使えない」のは当然です。
これからその誤解を解いていきますが、最初にみなさんにわかっておいて頂きたいのは、
もし英文法が嫌いだとしたら、それは「丸暗記の英文法が嫌いなだけであって、本当の英文法は別物だ」ということです。
●そもそも「英文法」って何?
英文法とは、英語を使う上でのルールです。
このルールに従って英語を使うからこそ、言葉でのコミュニケーションが可能となるのです。
英語の4つの技能(読む・書く・聞く・話す)のすべての土台になるのが英文法です。
すごく簡単な英語にも英文法が使われており、たとえば、She lives in London.「彼女はロンドンに住んでいます」
という単調な英文にも、「Sheが3人称単数の主語であり、現在のことを述べるには3単現のsがつく。
また、in Londonという前置詞句は副詞の働きがあり、動詞livesを修飾する」という英文法のルールがあるのです。
「だからそういうのがイヤなんだよ」と言われてしまいそうですが、決して「いつもこんな分析をしなきゃいけない」
ということではありません。
英文法を知っていれば、その「仕組み」を利用して、無限に文をつくり出せるということを知ってほしいのです。
この文の延長に、たとえばShe lives for BTS.「彼女にはBTS(韓国の音楽グループ)が生き甲斐だ」
(live for ~「~のために生きる」→「~が生き甲斐」)という英文があり、
そういった英文を自在につくり出すことができるのです。
学生のうちは「試験に出るから英文法をやらないといけない」と思う人も多いのですが、
試験がなくても、効率的に英語を習得していこうと思うなら、英文法はやっておいたほうが絶対にいいのです。
次の項目でもっと説得力のある例でお話していきます。
なぜ英文法が必要なの?
●英文法を知っておいた方が効率が良い
英文法という「ルール」を先に知ることのメリットを、ラグビーで説明してみましょう。
たとえばラグビーのルールをまったく知らないまま、ただ試合を見たとしましょう。
何試合も見ていれば、「あれ、ボールを前に投げちゃいけないのかな」と気づく人も出るでしょうが、
仮に1試合で気づいたとしても80分かかります。10試合見ても気づかない人のほうが多いかもしれません。
でも最初に「ラグビーでは前方にボールを投げてはいけません。
ただし蹴るのはアリです」という「ルール」を教えてもらえれば、ムダに時間を使う必要がなくなります。
圧倒的に時間を短縮できるのです。
さらに「前にボールを投げてはいけない」ということが重要なルールだと強調してもらえれば、
それに関連したルールの習得も簡単になります。
たとえば「腕・手などに当たったボールが前に落ちることも(前に投げることとみなされ)反則になる」という
新たなルールが理解しやすくなるのです(ちなみにこの反則は「ノックオン」と呼ばれます)。
これは英語を学ぶときも同じです。
ただに英文を大量に眺めていれば、文法を学ばなくてもある程度はできるようになるかもしれません。
でも先に文法というルールを知ったほうが、成長スピードが圧倒的に早いのです。
「英文法を学ぶ」ということは、英文法の学者達が一生を費やして研究しながら発見した
「英語の法則」を一瞬で教えてもらえることなのです。
●英文法ができるとカッコいい
英文法を使いこなすメリットは意外なところにもあり、たとえば仕事で英語を使うときに「信頼感」を生み出します。
きちんと英文法を使って話したり書いたりできるほうが、相手にきちんとした印象を与えられるのです。
また、僕の経験でも、仕事で一緒になったカナダ人に「あなたの英語は、文法がしっかりしているのでとても理解しやすい」と
言われたことがあります。
「日常会話で英文法が役立つ」というのは意外に思えるかもしれませんが、英文法に則って話すことで、
主語なのか、関係代名詞の後はどうなっているのかなど、相手に「英文の型」を予想させることができるのです。
また、洋画や洋書では英文法の知識がないと、繊細なニュアンスの違いやイヤミ・皮肉などを理解できません。
これでは楽しみが半減してしまうのです。
何より、「文法がしっかりした英語」を使いこなすのはとてもカッコいいことだと思います。
「英語の発音が良いとカッコいい」というのは誰もが知っているでしょうが、
「英語の文法がしっかりしているのもカッコいい」ということをみなさんに知ってほしいと思います。
日本人にとっての日本語文法
●実はずっと「日本語」を勉強してきた
「日本人は日本語の文法なんてやっていない」という発言には大きな誤解が潜んでいます。
僕たち日本人は確かに国語文法の授業というものを習って日本語を使えるようになったわけではありません。
でも、生まれたときから今までずっと国語(日本語)を学んできているともいえるのです。
たとえば間違った日本語を使ったときに保護者や教師から直されたり、時には叱られたりしてきたはずです。
小学校から国語の教科書を読み、テストでちょっとした日本語のミスでバツになり、
授業中にみんなの前で教科書を読み、もし読み間違えればクラスメイトに笑われた人も少なくないでしょう。
こういった大変な思いをして日本語を学んできたのです。
ただ、それがあまりに日常的だったり、昔のことだったりするので、強く意識していなかっただけではないでしょうか。
「日本語の文法なんて勉強していない」というのは大きな勘違いなのです。
●無意識に日本語の文法を使いこなしている
「確かに学校で国語の授業は受けたけど、別に文法を知らなくても話せるじゃん」という意見もありますが、
これまたとんでもない勘違いです。
決して「文法を知らない」のではなく、正しくは「文法のことをいちいち考えなくてもいいくらいに無意識化している」だけなのです。
もちろん常に正しい文法だけを使っているわけではありませんが、大半の人が大半の場合において、
文法を意識していないだけで「使いこなしている」のです。
試しに次の問題をやってみてください。
問:自然な日本語はどちら?
①「誰が知っているの?」 ②「誰は知っているの?」
この問題、老若男女問わず大半の日本人が即答できるはずです。
①「誰が知っているの?」は自然で、②「誰は知っているの?」は(言いたことはわかりますが)自然とは言えませんね。
正解は①です。
このように、日本語の使い分けはできるはずですし、変な日本語に反応することもできるでしょう。
それはつまり「無意識的に文法を使いこなしている」とも言えるのです。
●「が」と「は」をどう使い分ける?
ただし、すぐに答えは出ても、なぜもう1つが間違いなのかを説明するのは至難の業でしょう
(たとえば高校生に聞いてみても大半の人がお手上げだと答えます)。
簡単に説明すると、「が」は「新情報(新しい話題)」に、
「は」は「旧情報(すでに知っている情報や一度話題に出た情報)」にくっつきます。
たとえば、「今日、新しいマンガが発売されたんだ。そのマンガはネットでしか売られていなくて…」
では、最初に「新しいマンガ」と出てくるときは「新情報」なので「が」がつきます。
その後の「そのマンガ」では、一度出てきた情報なので「は」となるわけです。
これだけなんです。
さっきの問題でいえば、「誰」という疑問文で使う言葉は「未知の情報=新情報」なので「が」がつくのです。
これは他の疑問の言葉でも同じで「何が」「どれが」であって、「何は」「どれは」とは言いませんよね。
この「が」と「は」の使い分けは、日本で育っていれば大量の日本語に触れる中で自然に覚えられますが、
日本語を勉強しようと思った外国人にはものすごく難しいのです。
そこで困っている外国人に「たくさん日本語を読んだり話したりしていれば、
そのうちできるようになるよ」と言ったところで、言われたほうは不安でしょうし、
何よりもできるようになるまでに膨大な時間がかかります。
逆に、そこで「新情報+が」「旧情報+は」と教えてあげれば一発です。これが文法の力なのです。
●ネイティブは英文法を使いこなしている
このように、「文法を知らない・考えていない・使っていない」のではなく、
「文法を自然と学んできたことを覚えていない・意識していない」だけなのです。
「文法のことを考えなくてもいいくらい無意識化している」とも言えます。
「意識していない」だけで、結果的に「使いこなしている」わけです。
当然、英語でも同じことで、「ネイティブは英文法を使いこなしている」というのが絶対的な真実です。
その証拠に、ネイティブたちは文法的に間違った英文に違和感を覚えるのです。
もちろんその度合いは人によって様々ですし、先ほどの「が」と「は」の使い分けのように、
きちんと説明できないことも多々ありますが、文法的に間違った文に対して「おかしい」と言えるのは、
英文法が基準としてあることの何よりの証拠でしょう。
英語ネイティブも、英文法を意識していないだけであって、使いこなしてはいるのです。
以上から、英語ネイティブであろうがなかろうが、英語をマスターするための最短経路が「英文法を学ぶこと」だと考えます。
そしてその英文法を一番効率良く身につけいていける方法・情報・英文を詰め込んだのが